亜獣少女

SIEGE SOUND
多くの先進国における少子化等を原因とした経済低迷は、長く人類が手を出さなかった禁断の領域の扉を容易く開けさせた。
ライフサイエンスにおける倫理的規制の全面撤廃である。
クローンによる予備臓器の確保、遺伝子組み換えによる優秀な畜産動物。
そんな中で、副産物としてある『存在』が誕生した。
成長期の人間の雌に良く似た姿形と肉体的特性を持ちながら、繁殖能力は持たず、極低い知能しか持たない生命体である。
獣のような耳を持つ人型というその特徴から、当初それらは『亜人少女』と呼ばれた。
人のようで人ではない、人として扱わなくて良い存在が産業上いかに有用なものか気づくのに時間はかからなかった。
人ではないことを強調するため、政府は彼女たちに正式に『亜獣少女』との名称をつける。
一見して人に見える存在を家畜のように扱うことに反対がなかったっわけではない。
道徳なき経済は悪徳と説く者たちは確かにいた。
しかし事ここに至っては、ほとんどの人間がそれを綺麗事と一蹴した。
言葉にしないだけで、一部の例外を除くほとんどの人間が心中思っていたのだった。
経済なき道徳など、寝言に過ぎないのだと。