『星に願いを』 CV 秋野かえで
いぬのしっぽ 秋野かえでさんの優しい語り口で朗読された物語。小説と散文詩の間のあなたに語りかけるようなお話しをお楽しみください。
物語抜粋-sample-――ああ、綺麗。
星が砕けて砕けてソラから地上に落ちるのは、とてもとても美しい。
これは何十年かに一度の流星群だそうだ。
今世紀最大の。
史上初の。
歴史上類を見ないほどの。
こういった類のうたい文句には正直飽きていたところだ。
ああ、でもこんなの生まれてはじめてだわ。
リリカルな表現が思いつかないので有体に言うなら、流れ星がとっても綺麗です。
私は宇宙服を着込んでヘルメット越しに片腕の酸素残量を見つめる。
ああそっか。
あとちょっとなんだね。
溜息すらもったいないので、我慢我慢。
こういう時、楽天的でユーモアがわかる友人が近くにいないのが残念だ。
現在、西暦を終えて数年たった人類は月での生活をはじめていた。
最初は歴史の遺産?古い言葉でレガシーというのかしら?月の土地の権利書で人類はすっごくもめた。
そのあと権利書はぜーんぶ国が買い取りました。
そんなこんなでもーっともーっと混乱しましたとさ。
それからというもの、人類はやっぱり人類として前の惑星から月に変わっても同じでした。
そう学校の教科書に書いてあった。
歴史の教訓というのは少しは活かされたけど少しも活かされなかったのね。
月の地上で生活するには市民権が必要だ。
そうでないものは地下へと流れる。
市民権は功績を称えられて手に入れることができる。
一部の特権階級を除いて、"良い事"をすれば市民権は得られる。
もちろん失う事もあるのだけれど、普通はない。
真面目で善人しか市民権は得られない。
だって遺伝子の戦いによる決着はもうここまできているのだもの。
効率を重視したAI搭載のロボットに仕事を奪われた結果とも言える。
そうやってシステマティックに人類は計算されて配置された世界で。
ある日突然。
そうね。
あなたたちにとっては、ある日突然のことではなかったのよね。
地下に住む住人達の大規模な暴動が起きた。
たった24時間で2割の人間が築きあげた文明を、8割の人間にこなごなにされた。
ああ、そっか。
うん。
きっと。
きっとこういう考え方が私たちはよくなかったのかな。
人間を数で一つにまとめるなんて。
そんなんだから私たち失敗しちゃったんだね。
ソラを見上げるとやっぱり星が綺麗だ。
さーっと、暗闇を駆け抜ける光。
それが短時間でいっぱい。
私。
今ので幸せ使い切っちゃったかも。
うん。
今のはジョークとしてはいまいちかもしれない。
ユーモアがわかる友達が近くにいてくれればなぁ。