雲の上を歩いていた島さち子

グループゼロ
僕の子供が狭い路地から、この世にグイと身を伸ばしたとき、あゝ、これが天の采配なんだと解ったよ。
僕はまだあの時の興奮を鎮めることが出来なくて雲の上を歩いている。
喉の羊水をピペットみたいなもので吸引され始めての呼気とともに、しわがれた挨拶を送ってきた時の喜びを、僕は決して忘れない。
それなのに彼女の姿が見えない。
これが現実なのか?