我慢できない、あかりの欲情mp3版

夢創~MUSOU~
プロローグ子どもの頃、よく遊んでいた男の子がいる。
アタシ、鈴生あかり(すずなりあかり)は、そんな幼なじみの男の子と、暇さえあれば一緒に遊んでいた。
他愛ないことで笑いあったし、喧嘩もしたし、アタシたちの両親から見ても良い仲に見えていたと思う。
かくいうアタシは、その・・男の子のことが、昔から好きだったんだ。
けど・・だけどさ。
昔っからアタシは強がりなところがあって・・。
いつまでも、その気持を告白することが出来なかった。
そんなアタシのことを、神様がイジワルしたのカナ。
小学校の・・六学年も終わろうかっていうときに、引っ越しが決まったんだ。
両親の仕事の関係で、仕方ないんだって今なら理解できる。
まだそんなことが分からない子どもだったアタシは、イヤだって言って泣いた。
随分と長い間、ぐずってぐずって、両親に説得されて。
アタシは学校のクラスメイトに・・もちろんその男の子にも引っ越すって言えないまま、どんどんと時間だけが過ぎていった。
そして、いよいよ引っ越しの前日になって、事情を知っていた担任の先生がクラスメイトにアタシが引っ越すことを知らせた。
みんな突然の話に驚いてたし、仲の良かった女子なんか、その場で泣いちゃって。
でも、アタシは今までに散々泣いていた分、不思議と涙が出なかった。
それよりも、ずっと俯いたままの、男の子のことが・・気になって仕方なかったんだ。
引っ越しの当日。
その日の私は、子どもながらに観念してたのか、素直に両親の言葉に従って、車に乗りこんだ。
ゆっくりと・・進みはじめる車。
何か予感がしたアタシは、後部座席のシートで・・後ろを向いたんだ。
窓から見えたのは・・ヒザに手を突いて、肩で息をしている男の子。
もう遠くだったから、表情も分からなかったけど、あの男の子だって分かった。
出しつくしたと思ってた涙が、溢れてきた。
顔をあげた男の子と、アタシは目があった。
あったと・・思う。
もう全然見えないはずなのに、男の子が笑ってるって、アタシには見えた。
それから座席のシートに座りなおして、アタシは泣いた。
声に出さないよう、必死にこらえながら。
そして数年後――作品再生分数:33分あかり役紗藤ましろ:イラストあみきす:シナリオと~かぃ: