黒き翼の大天使ープロローグ
遠蛮亭 世界はいちど滅び、そして女神の力をもって再生した。創世の竜女神は「アルティミシア」という大陸を創るとこれを9柱の女神たち……のちに各国の主神と呼ばれる……に分け与え、自らは創造に疲れた身を休めるべく、「神域の霊峰」の最奥で眠りにつく。
それから数万年。
あるときから「魔族」と呼ばれるものが、アルティミシアを襲うようになった。
魔族は強大で強力であり、力も魔力も人間を大きく凌ぎ、そしてなにより狡猾であったために、人類はこれに抗し得なかった。
今をさかのぼること約1800年、当時まだ王国でなかった都市国家ウェルスの将軍シーザリオンは史上初めて眠れる竜女帝に目通りし、最愛の恋人ルクレツィアを自ら手にかけることを代償に世界を統一し魔族を駆逐する力を得、世界最初の皇帝・黄帝となる。
しかし魔族の危機が消えることはなく。
それから600年、今度はある淫魔の娘を捕えた山賊・ゴリアテが「成功した相手の力を収奪する」という力を得て女神たちを凌辱、強大な力を得て大陸2度目の皇帝・白帝となる。
3人目の皇帝は草原から。
下級貴族から絶対的なカリスマと戦術眼で頭角を現し、ライバル・トゥクタミシュとの戦いを制して草原を征服、そのまま大陸全土を覆った黒帝・アミール・ナーディル。
4人目は剣奴であった。
青帝・アータル・トリエステ・ロザリンド。
女尊男卑の圧政国家の中で見世物剣奴から身を起こした彼は、王位に就くやラース・イラという国をして神国ウェルスを凌駕する大帝国へと躍進させた。
そして、5人目、伝説の時代の最後の一人。
「魔王」オディナ・ウシュナハと「聖女」アーシェ・ユスティニアの息子。
そして「魔王殺しの勇者」新羅狼牙の養子。
銀髪美貌の天才児、赤帝・新羅辰馬の冒険の物語は、ここから始まる。
※今作は新羅辰馬の叔母にあたる聖女見習い、ルーチェ・ユスティニアの物語になります。