淫人魚姫
ドラゴンフライ ――太陽の下でエメラルドグリーンに輝く海、その奥深くに人魚たちの世界はあった。そこには、人間たちの手も及ぶことも無く、人魚たちの世界は平和そのものだ。
しかし、幼い人魚のティナは、そんな平和だが退屈な暮らしにもう飽き飽きしていた。
ティナは好奇心が強く、とりわけ外の世界――、人間の世界に憧れを持っていた。
その思いは日を追うごとに大きくなり、人間の世界に行ってみたい、はては人間になってみたい、という強い気持ちに変化していった。
――そんなある日のことだ。
ティナは仲間の人魚にその思いを打ち明けた。
「ねえねえ、お姉様、わたし人間になりたい!外の世界で暮らしたいの!」唐突なティナの訴えに、姉は狼狽した。
「……そんな、ティナ……、人間の世界で暮らすのは大変なことよ?……それに人間になるのは大変なことなのよ?」しかし、そんな姉の心配など少しも気にかけず、ティナはまくし立てる。
「大丈夫よ、お姉様。
それにわたしはもう決めたの、だから人間になる方法を教えて!」ティナの決意が硬いことがわかった姉は、人間になる方法を教えることにした。
「……わかったわ、ティナ。
……この先のずっと深い所にある船の墓場というところに行きなさい、そこにいる海の神様にお願いしたら人間になれるから……」その言葉を聞いて、ティナは目を輝かせた。
「ありがとう、お姉様!それじゃあ、わたしもう行きます」見送る姉に手を振りながら、ティナは言われた通りの方向に深く潜っていった。