沈マナイ月第四部

ドラゴンフライ
―8月16日AM0時38分―「いやぁ……もう…やめてぇ………」「バカか?やめるわけねえだろ!」俺の目の前で下等な畜生同士が、醜く交わっている。
俺は監視がてら、その唾棄すべき光景を見つめ、唾を吐きかけたい衝動を抑えるのに必死だった。
目の前で無様に腰を振る男の号令一つで集められ、こんなことをしている自分自身にこそ、最も唾を吐きかけたいのだが……。
「おねがい……ほんとに…もう………」髪を振り乱しながら女が必死に哀願するが、そんなものはまったく意味が無い。
どの女も、だいたい言うこともやることも一緒だな…。
俺はこの光景を今までどれだけ見てきたのだろう…。
そして、この先どれだけ見続けるのだろう……。
「抜いて……もう…抜いてよぉ……」女の祈りにも似た哀願は未だ続いていた。
さっさとあきらめて、素直に快楽に溺れりゃいいのによ……。
チッ…くだらねえ……。
俺は夜空に浮かぶ月を見上げながら、肺に溜まったタバコの煙を、やり場の無い思いと共にゆっくりと吐き出した……。