クレイジーナックル2ボイス・バトルロイヤル

ZyX
ZyX
あらゆる格闘技に於いて、その道を極めようと修行する人間がある程度のレベルに達すると、必ずぶつかる壁がある。
――月影心眼流兵法術「かの流派ある限り、全ての武道は2番目以下に甘んじる」と謳われた、地上最強の名を冠する格闘技である。
しかし、その存在が幻と言われて既に久しい。
月影心眼流歴代宗家の中でも希有の実力を持つといわれた格闘家を最後に、その技を継ぐ存在は確認されていない。
その、最後の伝承者である“月影蒼紫”という男が歴史の表舞台より消えてから既に、八十年の歳月が流れていた――草壁蒼馬は、自分が一体何者なのかわからなかった。
現在の自分を最も明確に表すものが、それまでの人生の記憶であるとするならば、蒼馬はそれを、3年前に無くしていたからだ。
その恵まれた格闘センスのおかげで荒事を専門に食い繋ぐことができているが、そのことすら蒼馬には、かつての自分の人生について疑問を覚える要因にしかならなかった。
「本当の自分を取り戻したい」という思いを秘めたまま、蒼馬は今、クラウンシティという街でストリートギャング団の用心棒をしている。
人と付き合うのはあまり好きではないのだが、リーダーの涼二という男や、その妹の魅羅は蒼馬を快く受け入れてくれた。
しかしそれすらも、ほんのつかの間の幻になると誰が思っただろう?その日、いつもの場所に着いた蒼馬が見たものは、メンバーの笑顔ではなく、赤い、血の海だった。