ニャンニャンしちゃう!!

トラヴュランス
俺は小山隼人、大学生だ。
こう言っちゃなんだが、俺の心は今無性に侘しい気持ちでいっぱいだ!!というのも、付き合っていた彼女……いや、もう彼女ですらないあの女には、別の男が居たのだ!こうなりゃ、こっちだって未練はない。
俺はその女に関係する荷物をすべて処分すると、大学を自主休校し、独り地方へとツーリングに出かけたのだ。
「げっ!?猫!!」走り始めて数日目、その猫はいきなり俺の目の前に飛び出して来た!!俺は咄嗟にハンドルを切り、進行方向を変え……あれ?俺の身体は単車から放り出され、地面へと叩きつけられる!!いかん、こりゃメット被ってても駄目かも…そう思った時には、もう目の前は真っ白になっていた……気がつくと、俺はふかふかのベッドに寝かされていた。
ふう、何とか生きている様だ……俺は立ち上がろうとするが、身体に力が入らずあっさりベッドから転がり落ちてしまった。
俺が床に転がり落ちた音が聞こえたのだろう、こっちに向かって廊下を走る足音が聞こえてきた。
そして扉が開かれて、ひとりの女の子が飛び込んでくる。
「ど、どうしました!?…あ、お目覚めになったんですね♪」彼女は情けないポーズのまま固まっている俺を助け起こすと、よいしょとベッドに戻してくれた。
彼女の言うには、どうやら俺は3日ほど寝たままだったようだ。
彼女の名は観鈴(みりん)さんと言うらしく、クラシックなタイプのメイド服に身を包み、元気いっぱいという感じだ。
「隼人さんたら、いきなりダイニングを『ぱぁ~っ』って光らせたかと思うと、急にその光の中から落ちてくるんですもん♪」はぁ?俺が?虚空から落ちてきたぁ!?聞けばそのまま俺はダイニングテーブルの上に落下して、ここの主人の食後のお茶を台無しにして現在に至る、という訳だ。
どうしたんだ俺!?まさかテレポーテーションか!?そんな俺の百面相がよほど面白かったのだろう、彼女は興味津々って感じで俺を見つめている。
……そういえば彼女、なんで『ネコミミ』を付けてるんだ?それに尻尾と鈴つきの首輪まで……俺は自分の妙な登場の仕方も忘れ、思わずこう言ってしまう。
「あの…耳?」「あ、そういえば隼人さん、ネコミミがありませんよぅ?どうしたんですかぁ?」彼女はおもむろに俺に近づき、俺の髪をわしわしと調べ始める。
なんか、彼女の尻尾…勝手に動いてないか?「あれぇ?ホントにネコミミ、無いんですねぇ……何かの拍子に取れちゃったのかなぁ?……あ、気にしてたらゴメンナサイっ!!そう言うも、彼女は相変わらず俺の頭をいじり続ける。
と、「あ、あれぇ?」急に彼女が俺の胸にしなだれかかってくる。
「ごごご、ごめんなさいっ!!なんか……力が……」彼女の顔は赤らみ、目もとろんとしている。
おまけに抱きついたままなので、彼女の胸の鼓動が早鐘を打っているのが俺にも判る……これは熱があるのかもしれない。
「隼人……さん。
ご主人様って……呼んでいいですか?なんだか……隼人さんにこうして抱っこされてるとぉ……胸の奥が熱くなってきちゃうんですぅ♪」そう言うと、彼女は小さな舌で俺の顔を舐め始める…そう、まるで『猫』みたいに!?がちゃり「どうやら、目覚めたようだな」「あ、紫苑さまぁ♪」ドアを開けて入ってきたのは、観鈴ちゃんよりちょっとお姉さんという感じの女の子、まるで軍服のようなスーツに身を包んでいる。
……同じように『ネコミミ』をつけて。
どうも彼女が観鈴ちゃんの主らしいのだが……俺は彼女から聞かされた話にしばし呆けてしまった。
彼女、紫苑(しおん)さんによれば、信じがたい事にここは「猫の国」!?窓から見える景色だって、俺が走っていた山中とはかけ離れた住宅街という感じだ。
紫苑さん自身はネコミミの国の国防局に勤務する軍人で、結構な地位についているらしい(説明されたがよく判らなかった)。
観鈴ちゃんと二人でこの屋敷に住んでいて、ついさっき帰宅したばかりのようだ。
「しかし、お前何者だ?」そう言われるのも無理は無い。
俺はできるだけ詳しく彼女に状況を説明し、ここがどうやら自分の住んでいる世界とは違うという事を伝えた。
「……信じ難いな」まぁそりゃそうだろう、俺だって信じられん。
「まぁ、とりあえず身体が癒えるまではここに置いてやろう。
しばらくは私の管理下に置き、後は当局に任せるがな…」しかし、不適な笑いを漏らしていた紫苑さんだが、見ればやはり観鈴ちゃんと同じように顔を赤くしている…おまけに内股をもじもじとさせ、なんだか切なそうだ…「あれぇ?紫苑さまもサカっちゃいましたかぁ?」ちゅ♪そう言って急に俺にキスしてくる観鈴ちゃん(汗)「ち、違う…わ、私はそんな事は…」そう言うなり、顔を真っ赤にして部屋を出て行ってしまう紫苑さん。
しかし、観鈴ちゃんは動揺する俺にお構いなしに「ご主人さまぁ、ココがぁ…切ないんですぅ」そう言って自分のスカートの中に俺の手を導く…………しかし、今思えばこれが俺の『猫の国』で体験した、数々のイベントのほんの始まりに過ぎなかったのである