としあき

D.O.
世の中には、二種類の人間が存在する。
オタクと、そうでない者と。
無論、俺は前者である。
他の追随を許さぬ、鋭い観察眼――狙った獲物は(予算と在庫が許す限り)逃がさない。
オフセット本よりも、コピー本。
WMVより、DivX派。
2クール分きっちり、OPテーマもEDテーマも逃さずに見る。
もちろん、スタッフロールも頭に叩き込む。
それが、俺――吉岡利明。
インドアの似合う、ちょっとシャイなあんちくしょうさ……利明:「で!」ぱんぱかぱ~ん!祝!松川大島インターネット開通!!利明:「この日を、どれだけ待ち望んでいたことか……」利明:「これで俺様も、サイバーな世界の一住民になった訳ですよ」まずは、ブラウザを……ぽちっとな。
みょんっ。
うお!?立ち上がった!?利明:「感無量……」もう、役場まで足を伸ばして、ネット体験コーナーを活用しなくてもいいんだ。
俺は手に入れたんだね、俺だけのインターネッツを。
さようなら、昔の俺。
そしてようこそ、今日からの俺。
説明しよう。
ここは、松川大島――正確には『香川県松川郡大島』と呼称する。
……が、ほとんどの人は、松川大島と呼ぶ。
人口は数千人程度。
主な産業はミカン農業とソーメン作り。
漁業も盛んらしいが、俺は全く興味が無い。
一応、それなりに繁華街はある。
生活に必要な物は、たいてい、ここで揃う。
ゲーセンもある。
1ゲームで50円。
安い。
島には、色々な言い伝えや、伝説もあったりする。
その辺は、詳しく語ってもしょーがないので、省く。
いや、マジでそんな大したモンじゃないから。
興味のある人は、松川大島まで観光に来てくれ。
そしてウチに泊まれ。
そう、ウチは旅館を経営している。
……いつか俺が乗っ取って、コスプレ旅館に変えてやるツモリだ。
『海道』の名脇役、利明が主役のサイドストーリー。
筋金入りのオタク、利明がひょんな事から抱いた恋心。
利明は、この恋を成就させる事が出来るのか?