檻の中のわたし
CAGE ■ストーリー私の名前に変化がありました。苗字が新しくなったんです。
私の苗字は……嵩邑(たかむら)っていいます。
私は孤児院の前に捨てられていました。
捨てられていた……とは言い難いかも知れません。
だって、私を産んでくれたお母さん(きっとお母さんだと思います)は私の名前とおむつとミルク、それから僅かばかりのお金を置いていってくれたからです。
手紙には「経済的な理由で育てられません。
本当にごめんなさい」と書かれていました。
院長先生がそれを大切に取って置いてくれたので、今でも私にとってはお母さんの思い出になっています。
でも、嵩邑となった私は、産んでくれたお母さんのことを「死んだ」ことに決めました。
そう考えた方がいいと院長先生も言ってくれたのです。
孤児院での生活は辛かった……と思います。
思いますっていうのは、私には分からないからです。
男の子も女の子も、私に辛く当たるのです。
でも、そういう時はどうも私がバカなことをしているらしいからです。
一番年長のお姉さんがいろいろ教えてくれたのですが、どうも私は間が抜けているらしいのです。
だから、みんなをイライラさせてしまっているらしいのです。
ただ、私は自分のやり方で一生懸命なのに。
でも、いいんです。
こうして孤児院のみんなにいろいろなことを教えてもらったのですから。
だから、嵩邑の……私の家ではそうしたことを生かしていこうと考えているんです。