独占看護
Empty ■あらすじ「一体、俺は、どうなっちまったんだ…?」ぼんやりした意識の中で、動作のままならない身体に悪態をついた。その時、目の前に天使が舞い降りた。
柔らかな腕で、俺の頭をそっと包み、先ほどまであやふやに思えた地面へと導いてくれる。
「無理をしないで、横になって…そう。
どこか痛くないですか?」白い服を着た、優しい笑顔が、瞼の裏で瞬いた。
同時に、身体全体が軋むように悲鳴を上げる。
「いやあっ危ないっ!!」「っ!!」ブロロロロロ、キキー!グシャ?振り向くと、車のヘッドライトが目の奥に飛び込んで、次に目を開けた時には宙を舞っていた。
叫ぶ暇もなかった。
はじき飛ばされた先で背中から身体を強かに打ち付け、肺が一息に押し潰される。
引きつるように身体が震えると、目の前を何かが流れ落ちた。
真横になった地面に、赤い川が流れている。
鉛玉を投げ込まれたように頭が重い。
そして、世界は真っ白になった。
「俺…たしか、道を歩いていて、それで…」そうだ、俺は、車にはねられたんだ。
「大丈夫ですよ、心配しないで」傍らに立つ天使のような看護婦さんは、両手で俺の手を握ると、先ほどと同じ微笑みを浮かべた。
だがその微笑みは翳りを帯びている気がして、たまらない不安を呼び起こした。
何か悪い事を暗示しているようだった。
主人公は町はずれの病院に入院した。
その病院の院長の娘が運転する、車にはねられたための入院だった。
頭を強く打っており、しばらくの間、様子を見るために入院したのだった。
病院の院長はその娘の継母で、父親はすでに死亡しているらしい。
二人はすごく仲良しだ。
娘の真尋と、院長の碧子がやってきて、謝罪する。
その夜、碧子が主人公の病室を訪れ、事故の事は穏便にしてほしい旨を告げる。
治療費等は負担するという金で解決しようとするお願いにカチンと来る主人公は、とにかく家へ帰ろうとする。
が、碧子は、突然狼狽し必死で主人公を引き留める。
主人公の胸に、昼間に感じた不安が再び過ぎる。
碧子「検査の結果がまだはっきりしないんです。
できれば、もう少しここに入院をした方が……」主人公「え、突然そんな事言われても…」碧子は、精密検査の結果が出るまでは、入院していた方がいいと言う。
理由は、レントゲン写真(頭部?胸部?)に気になる点が見られるため。
現時点では、そう大げさに騒ぎ立てるものではないらしいが、主人公は、碧子の言う事に不信感を覚える。
他の病院へ行き、事故については然るべき態度で望むと息巻いて、やっぱり出ていこうとする。
碧子「それだけは許してください……」主人公「だったらそれなりの誠意を見せて貰わないとな」土下座してお願いする碧子の胸元には、深くくれたブラウスから迫り上がり、自らの両腕で形を歪めた膨らみが覗いていた。
それはゴムまりを二つ、ブラウスの中に無理矢理押し込んだように見事な弾力と張りを備えていた。
そして主人公は、無言で自らが望むものに手を伸ばしたのだった。
これは始まりでしかない。
これからエスカレートしていく自らの行動を止める理性の声はもう届かない。
もう明日、いや、たった今死んでしまうかもしれないのだ。
先の事を気にして何になる?目の前に差し出された獲物達は、ほっておくにはもったいなすぎる。
それに、卑屈に生きてきた自分が、思うまま生きる最後のチャンスでもあった。
ふと昼間に会った看護婦を思い出す。
優しくて柔らかくて、ふんわりとした笑顔が胸を締め付ける。
理想の女性だった。
しかし、明日をもしれぬ身で、いったい何ができるだろう?主人公は、この入院中に非道な行動に出るべく覚悟を決めるのだった。