匣の中の情事

WendyBell
◆ストーリー主人公はごく普通のサラリーマン。
会社での評判も真面目そうな普通の社員。
ある日、いつものように就寝前のネットサーフィンをしていると、たまたま関心のある内容が載っていた普通のブログだと思ってみていたら、実は自分のアダルトな体験も書いてるブログに突き当たった。
内容は、自らの痴漢体験について。
それも、する側ではなくてされる側の話。
しかも、それは自らネットで知り合った人とそういう行為を楽しんできたとそういう内容だった。
痴漢というと、偶に新聞を賑わすような、そんなのをついつい想像するが、そういう世界もあるのかと、半ば忘れていた気持ちのざわつきみたいなのを久しぶりに主人公は感じた。
◆登場キャラクター●藤枝雅結婚して五年になる人妻。
今の暮らしに不満はないが、子供もおらず、これといって夢中になれる事もなく、変化に乏しい同じ毎日に暇を持て余し気味の生活を送っている。
三十を前にして、最近ジリジリとした妙な焦燥感が、胸の奥に燻るのを感じている。
そんなある日、無趣味ということもあって、これではいけないとカルチャーセンターに無料見学に行くが、どれもしっくりこず、もやもやした気分でカルチャーセンターを後にする。
その帰り――電車に乗っていると、雅は痴漢を目撃してしまう。
と同時に、学生時代痴漢に遭ったことを思い出す。
当時はただ戸惑いて恐怖感から固まってしまい声も出せなかったのだが、何故かその後、その痴漢行為が、その感触が思い出され、無意識のうちに妄想してしまう自分に強い自己嫌悪を感じてしまい、無理矢理忘れた。
その時の記憶が思い出され、気がつけば目の前で行われていた痴漢行為を思い出すようになっていた。
そんな時、何気なくネットサーフィンをしていたら偶然、変態趣味の同好の士が集まる出会い系サイトに辿り着き、勢いで自分も書き込みをしてしまう。
そして、想像以上に多くの男性からメールが来るが、その中から一番安心できそうな雰囲気を感じた、主人公にメールの返事を書く。
内向的というわけではないが、友達を作るのが下手で、交友関係は狭い。
そのせいかあまり物事を知らず、知らない世界には理解を示さない場合が多い。
一転、その世界を知ってしまうと深みにはまりやすいタイプ。
●篠原貴子区役所に勤める事務員。
髪の長い美人だが、地味で化粧っ気も無く、あまりセンスが良いとも言えないメガネを深く掛けるタイプ。
とても、男性に気に掛けて貰えたり、声を掛けて貰えたりするタイプではなく、そもそも彼女が美人だと云う事にすら殆どの人は気付かないだろう。
その外見そのままに、読書が趣味で内向的。
かといって友達がいないわけでもなく多くはないが女友達は普通にそれなりに。
男性とまともに会話した経験もあまりなく、免疫も無い。
何を話して良いかわからずおろおろするだけ。
そういう感じ。
当然、つきあいも長く続かず、この歳になっても付き合った男の数はわずかで、男性経験も数えるほど。
勿論、人並みに異性に興味もあるし、性欲もそれなりに。
しかし、内向的なので自分から行動する事もない。
そういう面で満たされない事が、唯一不満と云えば不満だが、今の平凡な暮らしで満足している。
基本的に自分をかなり過小評価しており、自分が美人だという自覚もなく、男性が興味を持ってくれる対象ではないと自ら決めつけている所があり、また自分の性格も良くわかっているため、おしゃれに気を遣う事もなくそれが輪を掛けて彼女を地味で目立たない女性にしている。
●高木健一(主人公)それなりの他大学を出て、それなりの中堅商社に勤務してそろそろ十年。
それなりに仕事も評価され、それなりに仕事も任され、それなりのポジション。
つまり、それなりの人生を送ってるそれなりのサラリーマンと言う事。
それなりに仕事に打ち込んできたこの十年だったが、大学時代の友人もすっかり疎遠。
恋人なんてのも昔はいたような気がするが、今はそんな影もない。
かといって、職場に出会いや交友関係を求めるようなタイプでもない。
気がつけば、日々家と会社の往復の日々。
真面目に働き、真面目に暮らす。
ただそれだけ。
楽しみと云えば、仕事帰りの缶ビールくらい。
なんの変化も刺激もない。
趣味は、ネットサーフィン。
それなりに実益にもなるし、時間も潰れるしカネも掛からない。
最近は、昼のランチ情報なんかをブログで収集してる。
そんなある日、いつものブログ巡回中にたまたまちょっと特殊なアダルトな出会い系サイトに巡り会う。
久しぶりにスケベ心がむらむらとわいてきて、ついつい夢中になって体験談なんかを読みあさる。
すっかり興奮して楽しい気分になっている所に、痴漢相手を求めるスレッドで、自分が通勤に使ってる路線での募集に出くわし、その日の勢いからついつい応募のメールを出してしまう。
そして数日、相手から返事が来た。
それなりの日常から、イレギュラーな日常が始まった瞬間だった。