淫落カウンセリング~夫の目の前で、妻は本性に堕ちてゆく~
アパタイト 『杉の森クリニック』ここはメンタルクリニックとは銘打っていても、裏では女性患者を食い物にしている悪徳医院。俺、刑部圭吾(オサカベケイゴ)は、ここでカウンセラーをしている。
そんなある日――「……本来は、予約なしのカウンセリングを受け付けないんだがね」と、院長が、意味ありげな手つきでカルテを渡してきた。
カルテに目を通す。
そこには、俺がこの道に進む切っ掛けとなった男の名が記されていた。
――そして、執着し続けた女の名も。
――勤め人時代、狂おしい思いを寄せていた女性がいた。
その頃の俺は、引っ込み思案で自信がなく、ついに声を掛ける事はできなかった。
ただ、姿と声を脳髄に焼き付ける事しか出来なかった。
そうこうしているうちに元上司の香坂茂が、彼女と結婚を前提に付き合い始めてしまったのだ。
ずっと見ていた俺を差し置いて、何故あんな男を選んだんだ!「……っ!」――過去に飛ばした意識を引き戻し、粘っこい笑みを浮かべている院長に視線を向ける。
押さえられない程の、どす黒い感情が湧きあがってくる。
人妻だろうと関係ない。
俺が一番欲した女を、今度こそ手に入れるのだ。
――どんな手を使ってもな。