蟲獄の姫~迷い込んだ蝶は美しい羽根を無傷では逃げられない~
あとりえ牡丹 それはまだエルフと人間が長きにわたる戦争からようやく歩み寄りを始めた頃の時代。エルフの国の貴族の娘であったリーゼロッテは、ギルドの仲間たちと来賓として或る人間の国を訪れていた。
しかし晩餐会の夜、エルフを憎む人間派の暴動に巻き込まれ、仲間の大半を失ってしまうことになる。
恋人でもありギルドの長でもあるオーウェンに、危ない所を助け出された彼女。
そんな彼女に、オーウェンは自分はまだ捕らえられている仲間たちを助けなければならないと言い、彼女を安全に国外へ逃がすべく、護衛を付けて独り宵闇の中へ送り出したのだった。
姿を隠し、身分を偽って街道を進むリーゼロッテだったが、しかしとある村でトラブルに巻き込まれ、手近な森へと姿を隠したのだった。
――しかしその森は、人類が未だ踏破できていない未知の密林で、異形の生物たちが跋扈する地獄のようなだった。
あまりに広大で、危険な生物多いため、探検家すら忌避するその森の先に何があるのかすら、未だに知られていないほど。
激烈な生存競争の中を生きる異形たちは、食欲と性欲をどんなものにでも向ける。
食えるものは何でも喰らい、交われるものは異種であったも構わない。
神から見放されたその世界に迷い込んだ、リーゼロッテに降りかかる悪夢。
それでも彼女は生き延びねばならなかった。
オーウェンと再会し、仲間たちを救うという崇高な目的が彼女にはあるから…。
基本12枚/全182ページサイズ1920×1440