義装母子1
せなか 【全59p】表紙:1p裏表紙:2p本文:56p【内容】自分の性癖に気付いたのは学生の頃。一度友人に話してみた。
最初は冗談半分で聞いていた友人も、途中から私が本気だと理解した様子で、その際「あんまり他人に言わない方がいいよ」と助言を貰った。
そうか、私は…『特殊』なんだ…。
世間では「性的マイノリティに理解と配慮を」等と叫ばれているが、正直羨ましい。
私の性癖はこの先どんなに世の中が変化しようと、恐らく理解も配慮もされないだろう。
私が性欲を発散するという事は、犯罪者になるという事だ。
そしてもう一つ悩みがある。
これも学生時代に友人と過ごす内に気付いたが、どうやら私は他人よりも性欲が強いらしい。
最悪の取り合わせ。
湧き出る欲求をぶつける場所がない。
それが理由で●●時代はやや塞ぎ込む時期もあったが、大学に入る頃にはそんな悩みにも多少自分の中で折り合いをつけていた。
自分の性癖には『蓋』をし、『普通の学生』を心掛けた。
それでも強い性欲と男性への興味は抑えが効かず、私はこの頃、たくさんの男性と寝た。
どうやら私の体は、男を誘惑する事に長けているらしく、どの男性も私と会話はしていても、目は「そちら」を見ていた。
そこで少し誘う素振りをすれば、独りで夜を過ごす事もない。
単純なゲームだった。
周囲の女性からの評判は最悪だったが。
ただ…発散しているはずの欲求が、何故か満たされない感覚があった。
何故か…いや理由は明確だった。
どんなに男に抱かれても、埋まらない『穴』。
一生完成しないジグソーパズル。
そんな生活は就職後もなお変わらず、ある日職場でトラブルが起きる。
上司との不倫が露見したのだ。
幸い訴訟問題になる事は無かったが、職場には居られなくなり退職。
私の身内にもバレてしまった。
家族からの叱責の後、勘当同然に家を追い出された。
それでも、唯一多少気にかけてくれたのは姉だけ。
でも私は姉が苦手だった。
だって元はといえば…。
姉に「家庭を持てば変わるかもね」と婚活を奨められる。
正直私も、自分の性分に我ながら辟易していた。
家庭に入って落ち着いてしまおう…不純な動機ながら、私は結婚相談所に登録した。
そこで、ある男性と出逢う。
私よりも10歳程年上。
その男性は奥さんの浮気が原因で、離婚を経験していた。
「僕が寂しいというのもあるんですが…息子が気掛かりで。
平気だと言いつつ、母親という存在への憧れがあるみたいなんです」…息子?ズズ…と、自分の中から音が聞こえる。
「その息子というのが」と男性は写真を見せてくれた。
そこには、サッカーボールを持った笑顔の男の子が写っていた。
一目惚れ…という物を初めて経験した。
それと同時に感じた絶望と諦観。
どんなに見ないように、意識しないようにした所で、「コレ」が私の本性なんだ…と。
(この人と結婚して、上手くやればこの子と肉体関係を結べる)内側から響く悪魔の囁き。
狂気の提案。
抗い難い欲求。
今まで抑えていた物が私の中を満たす。
埋まるはずの無かった私という歪なジグソーパズル。
その最後のピース。
後の人生など、どうでもいい。
私は『母』になる。
『彼』を●す為に。