邪術師の妹と賢者の姉画像500枚物語22枚
KOC この作品は500枚の画像(PNG)と22枚(PDF)の物語(小説)を収録しています。物語に沿った画像を描いております。
物語を読んで想像を膨らませて頂ければ幸いです。
下記物語は、体験版の一部です。
冷え込む早朝、賢者の学院長である父レオニスと、姉アリシア、そしてリリムは一緒に食卓を囲んでいた。
まだ朝の光が差し込む前で、薄暗い食堂には食器を置く音だけが響く。
レオニスは静かに紅茶を口に運んでから、じっとリリムに視線を向けた。
その鋭い眼差しに、リリムの動きが一瞬止まる。
父の眼差しを感じるだけで、胃が重く沈んでいくようだった。
「リリム、学院に入ってもう一年経つが、お前はまだ自分の力を十分に発揮できていないようだな」冷ややかにそう言いながら、レオニスはリリムの方にわずかに身を乗り出した。
アリシアは黙って朝食の手を止め、視線を伏せている。
父の叱咤(しった)が始まるたびに、彼女も複雑な表情を浮かべるのだった。
リリムはうつむき、何も言い返せない。
魔法の素質がないと知っているのに、なぜ父はこれほどまでに期待をかけてくるのか。
アリシアのように優秀でない自分が、この家族の中でただの失望であると感じる瞬間だった。
「お前には、もっと努力する義務がある。
アリシアを見てみろ。
日々の鍛錬を怠らず、学院で高い評価を得ている。
学院長の娘であるという自覚を持て。
お前が何も成せぬままでは、我が家の名誉にも傷がつく」静かに冷徹にレオニスの言葉が続く。
リリムは唇をかみしめ、反論したい気持ちを抑える。
胸に湧き上がる悔しさと無力感に押しつぶされそうだったが、アリシアが優しくリリムの肩に手を置き、彼女の視線を受け止めた。
「お父さん、リリムも頑張っているわ。
少しずつでも成長しているもの」アリシアの優しい擁護の言葉が、その場に一瞬の静寂をもたらした。
しかしレオニスは冷たく鼻を鳴らし、食器を手に取る。
「成長の速度は問題ではない、成果が全てだ」レオニスの無慈悲な言葉が食卓に残り、リリムの胸に深く突き刺さる。
自分が父の失望にしかならない存在だと再確認する朝が、またしても始まった。
レオニスが食堂を出ると、家の中に静寂が訪れた。
扉が閉まる音が冷たく響き、リリムは肩を落としてうつむいたまま、何も言えずにいた。
胸の奥で湧き上がる悔しさと自己嫌悪を抑え込もうとするが、どうしても心が沈んでいく。
そのとき、アリシアが静かに席を立ち、リリムの隣に座り直した。
彼女は優しく妹の手にそっと触れる。
「リリム、大丈夫よ。
お父さんは少し厳しいところがあるけれど、それはあなたに可能性があると思っているからよ」リリムは小さく首を振った。
「お姉ちゃん、私には魔法の才能なんてないって分かっている筈なのに…どうして…?」瞳に涙を貯め、震える声で問いかけるリリムに、アリシアは柔らかな笑みを浮かべた。
彼女はリリムの肩に手を回し、そっと抱きしめるように引き寄せる。
「私だって、最初からうまくいったわけじゃないのよ。
何度も失敗したし、お父さんに認めてもらうのに必死だった。
大丈夫よ、リリム。
自分を信じて」アリシアの温かな言葉が、リリムの心に少しずつ染み渡る。
リリムは姉の胸に顔をうずめ、涙が止まらなかった。
そんな彼女の背中を、アリシアはそっと撫で続ける。
「焦らなくていいのよ、リリム。
あなたにはあなたの道がある。
私はいつだって、リリムの味方だから」アリシアの優しさに包まれてリリムは涙を拭き、そっと顔を上げる。
「ありがとう、お姉ちゃん…」その顔に微笑みが戻り始めたのを見て、アリシアも穏やかに頷いた。
リリムが賢者の学院に通うようになってから、心に深い傷を刻み込む日々が続いていた。
ある日、学院で行われた魔法適性検査。
リリムは期待を胸に挑むが、周囲の生徒や教師の前で「魔法の素質がほとんどない」と酷評されてしまう。
見守る父レオニスの冷たい眼差し、そして無言で浮かべる失望の表情が、リリムの心をさらに追い詰める。
傍にいた姉アリシアも何も言えず、リリムの中で家族に対する屈辱感と孤独感が一層深まっていった。
別の日、授業中にある教師が優秀な生徒としてアリシアを称え、続けてリリムを「学院長の娘なのに姉のような才能がない」と厳しく侮辱する。
クラス全体から嘲笑が巻き起こり、リリムは顔を赤らめて震えた。
学院内に広がる彼女の評判は「学院長の落ちこぼれ娘」でしかなくなっていく。
さらに、授業で些細なミスを犯したリリムは、厳しい罰を受けることになる。
父レオニスは「学院の規則だから」と冷徹に言い放ち、助けを求めるリリムを無視する。
彼女がどれだけ傷つこうと、父も姉もその姿をただ黙認するだけだった。
そして、学院の模擬戦闘試験。
リリムは力を発揮できず大怪我を負ってしまうが、周囲の教師や生徒は「努力が足りない」と冷たく見放し、誰も助けようとしなかった。
観戦していたレオニスも容赦なく「役に立たない」と非難し、アリシアも悲しげな表情を浮かべながら見ているだけだった。
痛みと絶望に包まれる中で、リリムの心は次第に深い怒りと恨みに染まっていく。
日常の中で、姉アリシアが学院内で特別な待遇を受けている姿を見かけるたび、リリムの胸は締め付けられた。
父が姉に優しい笑顔を見せる一方、リリムには冷ややかな視線を送るだけ。
その場面を目の当たりにし、リリムは自分の存在が家族にとって失望でしかないと感じる。
学院の廊下でささやかれる噂が、彼女の孤独感をさらに深めるのだった。
こうして、次第にリリムの中で姉と父に対する憎しみが膨れ上がり、闇の深みに引き寄せられていく。
そしてある日、リリムは男子生徒に「アリシアが呼んでいるよ」と言われ、胸に少しの不安を抱きながらも体育館横の薄暗い倉庫へと向かった。
姉がわざわざ呼び出すことは珍しいし、その理由もわからなかったが、もし自分を励ましてくれるのなら嬉しいという思いもあった。
倉庫の扉を開けた瞬間、中にはすでに待ち構えていた三人の男子生徒が立っていた。
リリムは違和感を覚えたが、引き返そうとする前に、ドアの前に立つ男子生徒が低い声で告げた。
「アリシアに頼まれたのさ、リリム。
学院の評判を守るために、お前みたいな落ちこぼれに制裁を加える必要があるってさ」その言葉に、リリムの心が一瞬止まる。
アリシアが自分を?自分を救ってくれるどころか、見捨てて制裁を…?その信じられない言葉に、リリムの目に浮かぶのは混乱と恐怖の色だった。
だが、その隙を突くように、男子生徒たちが次々とリリムに手を伸ばし、彼女を冷たい床に押し倒した。
リリムは恐怖と混乱の中で必死に抵抗した。
彼女の心はアリシアの裏切りに打ちひしがれながらも、決して諦めることなく、彼らの手から逃れようと全力を尽くした。
彼女の○さな体は何度も床に押し倒されたが、その度に立ち上がり、再び抵抗を試みた。
「アリシアがそう言った」「学院長の娘がこんなに出来が悪くて、恥ずかしいよな」という嘲笑が耳に突き刺さる中、リリムは心の中で強く叫んだ。
「私は負けない、絶対に負けない!」と。
彼女の抵抗は男子生徒たちの予想を超え、彼らの動きを一瞬止めた。
しかし、少女一人の力が男子4人に敵うわけがなく、リリムの抵抗は終わりを告げる。
その後リリムは恐怖と苦痛にひたすら耐えるだけだった。
早く終わってと、祈るしかなかった。
リリムの頬を伝う涙が乾く頃、男子生徒4人の行為が終わる。
やがて男子生徒たちが去り、薄暗い倉庫にただリリムだけが残された。
体も心も痛みに覆われ、ひどく傷ついたリリムの心の奥に、姉アリシアへの失望と疑念が湧き上がっていった。
信じていた姉が、まさか自分を傷つけるように仕向けたのか。
今までずっと誇らしく思ってきた姉への信頼が、崩れ去る音がリリムの中で響いていた。
リリムは自宅に戻る気力を失い、重い足取りで学院を離れた。
暗い思考に囚われながら、人気のない森の奥へと歩を進めていた。
木々が生い茂る中、どこか薄暗くひんやりとした空気が肌にまとわりつき、彼女の心の中にある孤独感と絶望が一層深まっていく。
頭の中では、先ほどの出来事が何度も浮かび、暴行を加えた男子生徒たちの顔が悪夢のように脳裏に浮かんでいた。
その一つ一つが鮮明に浮かび上がるたび、リリムは悪寒に襲われ、身震いした。
気づけば、森の中を進むうちに小川のせせらぎが聞こえ、彼女の足元には水が流れていた。
岩だらけの沢に差し掛かったリリムは、その場で立ち尽くし、冷たい水に足を浸して震えながら呆然と空を見上げた。
月明かりがわずかに差し込むが、森は相変わらず暗く、彼女の心を映し出しているかのようだった。
「いっそのこと…」静かに呟くと、リリムは冷たい水に身を投げ出そうかと考えた。
命が尽きれば、苦しみも消えてしまうのではないかと思う。
足を進めたその瞬間、滑りやすい岩肌に足を取られ、体が不意にバランスを崩した。
崖のような場所から転げ落ちると、彼女はゴロゴロと岩にぶつかりながら河原へと滑り落ち、冷たい石の上に倒れ込んだ。
痛みにうめきながら、リリムは目を開け、まだ自分が生きていることに気付くと、思わずやりきれない気持ちが込み上げてきた。
「なんで…」とつぶやきながら顔を覆い、心が張り裂けそうになる中で、ふと視界の端に何かが映り込んだ。
目を向けると、そこには一人の男が倒れていた。
痩せた体に黒いローブをまとい、骨ばった指が冷たくなったまま、静かに動かず横たわっている。
その顔は青白く、どうやら命を落としてからさほど時間が経っていないようだった。
そして男の腕には、一冊の書物が握られている。
何かを守るかのように、大切そうに抱きしめられたそれは、異様な威圧感を放っていた。
リリムは、引き寄せられるように男のそばに歩み寄り、その書物をじっと見つめた。
暗がりの中でもわかる、その古びた装丁、重厚な雰囲気をまとった禁書らしき書物が、彼女の目に不思議な輝きで映っていた。
リリムは、気がつくと自分の手がその書物に伸びていることに気づいた。
触れてはいけない、そう思いながらも、その黒く重厚な装丁から不思議な魅力が漂い、引き寄せられるように指先が触れた。
その瞬間、脳内に強烈な感覚が走った。
突如、古代の記憶が洪水のように押し寄せ、リリムの意識に染み込んでいく。
まるで底知れない深淵からのささやきのように、古の魔術師の声が頭の中で低く響き渡り、封じられていた闇魔術の知識と秘密がリリムの脳に流れ込む。
知識の奔流は鋭い針のように突き刺さり、リリムの視界が暗転した。
立ちくらみを覚えた彼女は片膝をつき、激しく息を吐き出す。
その瞬間、リリムの茶色の髪が紫色に染まり、目も妖しい紫色に輝き始めた。
新たな力が体中に広がり、彼女の心の奥底にある孤独や悲しみ、怒りといった負の感情に呼応するかのように、書物に宿る古代魔術師の魂が喜びに満ちて目覚める。
リリムの胸の内で暗い力が渦巻き、彼女の全身から黒い波のような魔力が湧き出した。
立ち尽くしたリリムの周囲には、闇の霧のような魔力が漂い、空気がざわめき、冷たく澄んだ月光さえもその黒い気配に歪められていく。
戸惑いながらもリリムは高揚感に震え、大きく息をついて立ち上がった。
彼女の中で何かが完全に目覚め、解き放たれていく感覚が全身に広がっていた。
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