義装母子5

せなか
本文:80p義装母子シリーズ完結編_______________幼い頃からコンプレックスの塊だった。
私には姉が居る。
頭が良く、容姿も、妹の私から見ても美人だと思う。
だから…というべきか、周囲からよく比較された。
といっても、評価を直接口に出された記憶は無い。
成績もルックスも平均的な私。
理知的で容姿端麗な姉。
親も友人も、恐らく比較している意識などなかったかもしれない。
それでも、私は気付いていた。
私と姉が並んでいる時、皆の視線が注がれているのは、姉の方だった。
でも、落胆はしなかった。
物心ついた時から「そう」だったから。
姉を羨ましいとは思えど、恨みの感情を抱いた事は無かった。
彼女は不器用で、口数の少ない人だったが、私にとっては、優しいお姉ちゃんだった。
でもそれは、あの時までの話。
〇〇〇の時、私は恋をした。
席替えでとなり同士になった男の子。
優しくて友達が多く、綺麗な目をしていた。
意気投合し、彼を含む数人で何度か私の家で遊んだ記憶がある。
彼は私の家で遊ぶのが好きなのか、時には2人で遊ぶ事も増えていき…私の〇〇恋心は日に日に膨らんだ。
でもある日、彼が引っ越す事を知った。
当時の私にとっては青天の霹靂で、珍しく狼狽したと記憶している。
その夜は花でもないのに枯れてしまうのではないかと思う程、泣いた。
時間が無い。
卒業と同時に、彼には会えなくなる。
数日後、私は彼を呼び出した。
恐らく人生で一番勇気を出した日だと思う。
気の利いた言い回しも思いつかないまま、「好きです」と絞り出すのが精一杯だった。
永遠にも感じられたが、実際は数十秒間だったであろう沈黙を破ったのは、彼の言葉だった。
「ごめん…俺好きな人が居るんだ」泣いたのか、怒ったのか…その後の事はよく覚えていない。
次の記憶が始まるのは彼が私の家の前で…お姉ちゃんに告白していた場面。
恐らく…姉にフラれたのだろう事は、去っていく時の肩の落ち具合から察せられた。
少しして私に気付いた姉は、顔色ひとつ変えず、「おかえり」とだけ言って家に入った。
私は…動けなかった。
怖かったから。
やきもち…?嫉妬…?憎悪…?いや、足りない。
そんな言葉では。
彼への恋心が…憧憬が…執念が…姉への家族愛が…羨望が…尊敬が…濁流に飲まれていった。
自分の中に…ここまでドス黒い感情が存在すると突き付けられた。
そして「それ」に染まっていくのが恐ろしかった。
「そっ…か……私って…「選ばれないヒト」…なんだ……」恋に浮かれて忘れていた。
自分が花ではない事。
いずれ開く蕾すら、最初から無かったと。
その後の彼との思い出は…何故だろう…無い。
一切。
誰も悪くない。
彼も姉も…頭では理解していたし、理解している。
でも、心が…ついていかないかった。
ついていかない。
小中高大を経て、社会人となり、夫に出会い、結婚した今も…本当の私は、あそこに立って、〇さくなっていく彼を眺めている。
止まったまま、まだ動けていない。
ヒナタは…彼によく似ている。