サマーピクチャー~小さな丘の小さな夢~-神楽ゆめ編-

eclat
ゆめはどこででも眠ってしまう。
ボクの前だけかもしれないけど――。
瀬戸内海に面した小さな町――「夢見町」。
取り立てて目立ったところもない、本当に辺鄙な港町。
しかしここにある「夢見ヶ丘」には、ある理由からプロ、アマを問わず日本中から写真家が集まってくる。
その理由とは主人公“平井孝寿”の父親で今はもう鬼籍に入っている人物が撮影した三枚の風景写真にあった。
夢見ヶ丘を撮影したその写真は、カメラを扱う者に対して「自分もこのような一瞬を撮りたい」と思わせる、不思議なチカラがあったのだ。
孝寿も同じように写真を撮ってみたが、ついに父親のような作品を生み出すことはできなかった。
そんな折、夢見町が隣町と合併して、観光地として整備されることが決まった。
――もう夢見ヶ丘の写真を撮ることができなくなる。
深い喪失感を抱えながら、孝寿は廃校の決まった学園で最後の夏休みを過ごす。
生徒数は激減し、今は自分と三人の幼馴染の仲間だけの学園。
寂しくなっていくムードのなかで誰かが言い出した――「あの有名な風景写真みたいなのを撮ってアピールできれば、観光地として今のまま残してもらうことを全国の人たちに応援してもらえるかもしれない」――
小さな子供っぽい思い付きに、それでも仲間達は賛同し、立ち上がる――。