悶指姫[ドラゴンフライ] | 2次元ドットコム ショップ別比較

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「――いってらっしゃいませ、ご主人さま!」その日も俺は、可愛らしいメイドたちの笑顔に見送られながら、家路についた。
そして、店を出たと途端、これまたいつものように、言い知れぬ虚無感に襲われる。
――空しい……、空しすぎる……メイド喫茶に通い始めて数ヶ月――彼女たちは、俺をいつだって最高の笑顔で迎えてくれる。
お気に入りの女の子とも顔なじみになり、親しくなれた。
しかし、それでもやはり、こみ上げてくる空しさを、完全に抑えつけることはできない。
どれだけ店に通っても、どれだけ親しくなろうとも、所詮それは仮想世界でのこと――極論を言えば、俺が料金を払うから、彼女たちがその代償に微笑んでくれているというだけのことなのだ。
彼女たちが店で見せている姿は、彼女たちのほんの一部分、その他の大部分については、俺は何ひとつ知らない、そう、本当の名前さえも――もちろん、そんなことを言いだしたら、このゲームが成り立たないことぐらいわかっている。
――しかし、それでも、空しい……俺は、いつものように空しさを胸に抱いたまま、誰が待つわけでもないアパートのドアを開けた。
手探りで部屋の明かりを点けると、見慣れた自分の部屋の景色が浮かび上がる。
留守番電話をチェックしても、用件など入っていない。
彼女はもちろん、友達と呼べる人間すらいない俺にとって、電話という機械は、ただ憂鬱な気分に拍車をかけるという役目しか果たしていなかった。
買ってきたコンビニ弁当でわびしい夕食をとる。
ふと、ベッドの脇に置いたディスプレイケースの中のフィギュアたちと目が合った。
その中に、ひと際目立つフィギュアがある。
「メイドのリナ1/3」というモデルで、ハンドメイドの一品物だ。
スケールが大きい上、細部までよくつくりこまれたフィギュアで、今にも動き出しそうなほどの存在感を持っている。
俺はその夜も、いつものように、リナの笑顔に見つめられながら眠りについた。
――その次の朝のことだった。
「おはようございます!ご主人様!」俺は、目覚まし時計の代わりに、聞いた事もない女の子の声で目を覚ました。
誰か尋ねてきたのかと思い、ベッドから起きて、玄関の方を見やったが来客の気配などは無い。
そして、首を傾げて部屋の中を見回した時、信じられない光景が目に飛び込んできた。
リビングにあるテーブルの上に、ディスプレイケースに入っているはずのあの「メイドのリナ」が立っていたのだ。

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