【総ページ数】全58ページ【あらすじ】「これは?どういうことですかね?」机の上には、銀行の帯付で5本。
私が独身の頃に溜めていた、旦那にも内緒のお金。
「三原教授は大学で大きなお力を持っているとお伺いしております」「いやいや、私なんてたまたま研究の成果が出ただけで、教授なんて肩書与えられた若造ですよ」30代後半、私とそう変わらない年齢に見える三原教授は、謙遜しているものの自身に満ちた表情で、こちらを見つめていた。
「……実ちゃん。
息子が今年受験で、かなり追い込んでいるのですが成績がついてこない状況でして」「ほう」「旦那が東大からの官僚になったもので、実ちゃんに過度な期待をしていて、それがかなり重荷になって」日に日にやつれて、目の下にクマを作って、ふらふらになりながらも模試の結果がE判定で、旦那にきつく詰められる。
そんな実ちゃんの姿が……。
もう、見てられない。
「……もう、実ちゃんがこれ以上苦しむのは見てられないのです……」「なるほど。
で、私が大学から与えられてる推薦枠を、息子さんに使って欲しい、そういうことですかね?」「はい……。
初めてお会いして、一方的なお願いで申し訳ないのですが……お願いいたします」深々と頭を下げる。
「ふむ。
心ぐるしいのですが、推薦枠を使うとしてもそれなりの能力が伴わないと、他の努力して入ってきた研究生と軋轢を生むだけですし」「無理を言っているのは承知してます。
三原教授だけが頼りなんです!お願いします!」旦那にバレないように、昔イベントコンパニオンをやってた時に作った夜の人脈を活用して何とかたどり着いた一筋の光。
推薦枠等の特別な力を持ちながら、その裏で黒いウワサが流れている強欲な人物。
「まぁまぁ、落ち着いてください」そういうと、三原教授はスッと立ち上がり、部屋の隅の棚から小さなアロマアロマキャンドルを取り出して戻ってきた。
慣れた手つきで、火を灯すと何とも甘いニオイが立ち込める。
「うん、やはりこれが一番いい。
私のお気に入りのアロマでしてね。
研究の息抜きにたまに使うんです」「は、はぁ。
確かに、いい匂い……」「さて、話の続きですが」「お金なら、まだ用意できます……」当てがないわけではない、旦那にバレないようには難しくなるけど、後戻りできない所まで話を進めてしまえば大学のランク的にも旦那も納得してくれるはず。
「なるほど。
お金さえ積めば私は落とせると、そう思っているという事ですか。
なるほど」三原教授は事件を推理している探偵のように、あごに手を当てながら大げさに考えている様子を見せる。
そして、先ほどまでの穏やかな雰囲気を消して、裏の顔へと表情を変えていく。
ニタァと不敵に上がった高角と、目を細めて笑顔にしているのに、目の奥では冷静にこちらを見据えてくる。
「私の事、かなりお詳しいようですねぇ」「おウワサは色々と」「そうですかぁ。
それは結構ですねぇ」しゃべり口調も何とも粘っこく、先ほどまでと同じ人物だとは思えない。
「ただぁ、一つ、勘違いされているようだぁ」芝居がかった口調に加えて、大げさに身振り手振り。
「私はねぇ、金には困ってないんですよぉ。
金をねぇ、いくら摘まれてもぉなんの興味もわきませんねぇ」「で、でも、いろんな事案で度々金銭を要求してるって……」「ええ、それはもちろん。
私が力を貸してあげるわけぇ、ですからぁ。
対価は必要すよぉ」「その方がぁ私にぃ、提供できるものの中でぇ、金銭が一番マシだったぁというだけの話でぇ。
対価はぁ、金銭だけとは限りません」そういうと、三原教授の目がイヤらしくゆるみ、私の胸元に視線を飛ばして来る。
「ずいぶんとご立派なぁものお持ちですねぇ」その一言で、何が言いたいのかわかって、恥ずかしさから体が一気にカッと熱くなるのを感じた。
胸を見られるのなんてほぼ日常で、何とも思わなくなっていたのに。
「息子さんの為にぃ、よろしいですよねぇ?」「……」実ちゃんの為なら、なんでもできると思っていたのに、即答できなかった。
旦那と実ちゃんの顔が三原教授のいやらしい顔の後ろにちらついて見える。
呼吸が短く早く、鼓動も耳に届くぐらい早く強く感じる。
「よろしい、ですよねぇ?」
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