「負けたら罰ゲームね」お兄ちゃんの軽い声に、私は小さく頷いた。
気持ちいい顔をしたら負け――そんな馬鹿みたいな遊びに、本気で乗るほど暇じゃない。
そう思っていた。
でも、どこかで予感していた。
お兄ちゃんとなら、どこまででも崩れてしまいそうだって。
最初は我慢していられた。
くすぐったくて、こそばゆくて、でも可笑しくて。
だけど触れるたびに、声が喉元でせき止められ、息が揺れる。
「……あれ?顔、赤いよ?」「……うるさい」たった一言が、あんなに掠れていたなんて、あとで気づいて恥ずかしくなる。
平気なふりをするのが、こんなに苦しいなんて知らなかった。
お兄ちゃんの目がじっと私を見ている。
ただの遊びじゃない。
試されている。
何を、なんて聞かないで。
自分でもわからないから。
「……もう、やめようか」そう言えば、逃げられる。
でも、逃げたくなかった。
心が痺れる。
呼吸が浅くなる。
唇を噛んで、なんとか堪える。
お兄ちゃんが何かを言おうとした瞬間、私は小さく笑った。
「……まだ、勝ってるから」強がりだった。
でも、せめて最後まで、この‘遊び’を終わらせたくなかった。
崩れてしまえば、もう戻れない気がしたから。
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公開日:5月25日
サークル:ドストライク!
最安価格:110 円
「負けたら罰ゲームね」お兄ちゃんの軽い声に、私は小さく頷いた。気持ちいい顔をしたら負け――そんな馬鹿みたいな遊びに、本気で乗るほど暇じゃない。そう思って...