となりの魔王使い[び~にゃん] | 2次元ドットコム ショップ別比較

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パセリにセージにローズマリーにタイム。
手入れをする者もいないのにたくましく生い茂る一面のハーブ。
崩れかけた茶褐色の煉瓦塀。
乱雑に積み重なったまま放置されている灰色の瓦礫。
……お隣が火事で全焼して、もうどのぐらい経つのだろう?おれはすでに、それがどんな建物だったのか、そこにどんな人が住んでいたのかも、まったく思い出せなくなっている……。
晴人「ん……?」部屋の窓を開け、見るともなしにお隣を見下ろしていたおれは、白々と冴える月明かりの中、ハーブの庭を歩く人影に気付いて、小さく眉を寄せた。
キモ試し気分でお隣の焼け跡に忍び込む連中は、そう珍しくない。
しかし……。
そいつのように、長いねじくれた杖を手に持ち、頭からすっぽりフード付きのローブをかぶるなんて酔狂な格好をしている奴は、さすがに初めて見た。
晴人「一体なんのコスプレだ、ありゃあ……?」?「わからないかい、少年?」晴人「おわっ!」突然、想像もしない場所から答えが降って来て、おれはひっくり返りそうになった。
?「もっとも本人は、あれをコスプレとは思っていないんだがね」皮肉な笑みを浮かべながら、彼女はゆっくりと窓の高さまで降下して来る。
透き通るように白い肌、風になびく深紅の長髪。
身に着けているのは男物の黒いスーツ。
その胸元は、はち切れんばかりに盛り上がっており、否応なしに視線が引き寄せられてしまう。
だけど、今……。
確かにこの人、上から…………。
?「どうした、少年?」皮肉な声を無視して、おれは彼女の足元を確認する。
……何も、ない。
小さく深呼吸をして、今度は彼女の頭上を確認する。
……やっぱり、何もない。
足元を支える土台も、身体を吊すロープも、何も、ない……。
芦屋晴人「なっ、なっ……なんであんた、浮いて……!?」?「つまらない質問だな。
これだけの美女を前にして、もっと気の利いた言葉は出て来ないのか、君は?」無茶を言う。
いくら相手が美人とは言っても、空飛ぶ相手に向かって真っ先に名前や住所や電話番号を聞く奴はいないだろう、普通。
?「しかし……」?「……ふむ、悪くない。
悪くないぞ、少年……」?「君を見ていると、食欲が刺激される。
夜食にはもってこいの逸材だな、ふふふっ……」晴人「夜食……?」宙に浮かんだまま、彼女はにやあっとイヤな笑みを浮かべた。
『夜食』という言葉とその表情に不吉なものを感じ取り、思わずおれは一歩後ずさる。
?「少々付き合ってもらおうか、少年」その途端、おれはいきなり全身の自由を失った。
まるで見えない巨大な手にわしづかみにされたように、まったく身動きが取れなくなる。
棒立ち状態のまま、おれの身体がふわりと浮いた。
そして、頭から勢い良く窓の外へ……。
晴人「うわっ、わっ、わぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

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