世の中には、いわゆるインチキ商品というのがある。
たいそうな性能、効能を謳っておきながら、中味は全く実を伴わない、いわば詐欺まがいの品々だ。
そういった怪しげで胡散くさい品々ばかりが当たり前のように出回っている町が、この日本の片隅に存在していたとしたなら?そしてその町では、それらの品々が本当に謳い文句の通りの力を発揮しているとしたなら?どうしてその町に限ってそんなことが起こりうるのか―――それは、その町には、けして世間の表には出てこない、とある秘密が隠されていたから―――これは、地図に無い町の、図鑑に載らない風物と、記録に残っていない事件の、物語。
その町の秘密を巡って交差する、想いと企みの物語。
■物語PROLOGUE主人公にはいまだはっきりしない幼い頃の記憶がある。
それは子供の頃、山形の祖父母の家に預けられていた折り、おそらくは近所と思しい町の一角でよく遊んでいたというものだ。
しかし彼が長じて、思い出話の折りなどにその町のことを話してみても、父母はどうにもその町のことははっきりとは知らず、主人公自身もその街並みがどこだったのか、記憶が定かではない。
そんなある時、主人公が通っている大学の研究室で資料整理をしていると、奇妙なノートが発見される。
どうやら東北のとある町の歴史や事物についての記録らしいのだが、その内容がいささか突飛に過ぎて、資料棚の奥深くで忘却されていたらしい。
ところが主人公は、そのノートの記述者を知っていたのだ。
その人とは、行方不明となっていた彼の叔父。
その叔父というのはいわゆる地方の郷土史家で、近郷の記録などを集めていたらしいのだが、ノートの中にかつて主人公が過ごしたあの町の事が書き記されていた。
どうやら叔父のノートというのは、その町についての歴史や事物を紀行文式にまとめた手記らしいのだが、どうにも信じがたく突飛な項目や図録ばかりで埋められている。
しかもところどころに項目名ばかりで、「詳細不明」「現在調査中」といった空白の欄がある。
そして主人公はノートに目を通すうち、名称のみが記されていて詳細不明とされている物品に、記憶が有ることに気がつく。
と言うことは、もしやこの手記は完全な夢物語ではなく、どこかしら現実に根ざした部分もあるのだろうか?主人公は今では記憶もあやふやなその町への郷愁も手伝い、手記に書かれた事柄へ強く興味を抱くようになる。
幸い学校は長い夏期休暇も近く、時間はたっぷりある。
叔父の手記の不明部分を埋める、とまではいかないかもしれないが、なんらかの発見があるかも知れないと、主人公は帰省することにする。
かくして主人公はそのノートを頼りに記憶を蘇らせ、どうにか思い出の町にたどりつくのだが、その町というのは叔父のノート通りに、様々に奇妙な事物、風俗が満ちあふれた不思議な町だった。
主人公はその町、「紅殻町」で様々な「珍奇物品」に出会い、そして町に秘められた不思議に触れていくことになる。
■登場人物▼宮里智久(みやさと・ともひさ)主人公。
大学三回生。
文系。
学芸員志望。
とりたてて取り柄のない青年ではあり、本人もそれを自覚しているのだが、本当は奇妙なモノに惹かれる性癖と、それらへの高い親和性を示す。
物事に対しては冷静であろうと務め、意志力もそれなりに強い。
だがそれは裏返せば、想定外の事態には狼狽えやすく、物分かり悪く頑固である、ということでもある。
そして実は結構涙もろい。
感情の琴線に触れる事があると、我慢しきれず泣きそうになってしまうこともしばしばだ。
▼宵待白子(よいまち・しらこ)CV:桜川未央紅殻町の郷土資料館兼図書館にいつもいて、何時も本を読んでいる物静かな女の子。
万事控え目で、謙譲心に溢れ、はにかみ屋で、とにかく表に出ることを好まない。
物腰は旧家のお嬢さま風であり、言葉遣いは優しく非常に丁寧。
穏やかで優しそうな少女だが、実はえらく悲観主義者であり、心の中は常に諦念と絶望に満たされている。
その為、時に人の肺腑をえぐるような、身も蓋もない言を口にしてしまう。
伏し目がちの憂い顔。
笑うときも大口を開けたりはせず、寂しげな影が色濃くつきまとう。
▼エミリア・M・ゴトフリート(―・ミュンスターベルヒ・―)CV:高槻つばさ紅殻町の蔵町の座敷蔵に寄宿している、外国人の娘。
容姿端麗、成績優秀、きつめの顔立ちながら、性格は生真面目で実は人を信じやすいお人好し。
『日本の文化を学びに留学した』と言い張っているのが、生国のことになると何故か口数が少なくなる。
文化のギャップのせいか色々ととんちんかんな事をしでかすことも多い。
街中のうるさ片から目を付けられ、出物腫れ物を扱うように接されているため、周囲から孤立しがち。
おかげでけっこう寂しがり。
実家は裕福な貿易商であり、紅殻町の珍奇物品を買い付けたりもしている……らしい。
▼朱籐松実(あけふじ・まつみ)CV:河乃音々30代半ば。
主人公と縁続きらしい年増の美女。
今では数少なくなった、紅殻町の宿を営んでおり、主人公は紅殻町にいる間、彼女の宿に居候させてもらうことになる。
性格は穏当で穏やかだが、男をどこか不穏な気持ちにさせる色気をそこはかと漂わせる。
要は孤閨をかこつ熟れた未亡人。
▼人見十湖(ひとみ・とおこ)CV:野月まひる探検家を自称する女。
帰省途中の主人公と同じ汽車に乗り合わせ、そのまま紅殻町まで(勝手に)ついてきてしまった。
主人公の調査中も何か
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